今年のお盆休み、久しぶりに故郷モンゴルの草原へ帰省しました。
例年にも増して雨が多かった今年、草原は生命力に満ちあふれ、一面に豊かな緑が広がっていました。風が吹くと、草は大きく波のようになびき、その合間から牛や羊の群れが顔を覗かせる──まさに詩のような情景が、四方八方に果てしなく続いていました。

視界を遮るもののない大草原に立つと、自分が地球という大きな星の上にいることを実感します。遠くまで続く地平線と大空の広がりが、胸いっぱいに開放感を運んでくれるのです。
とりわけ、雨上がりの草原から立ち上るかすかな香りには、どこか懐かしさがあり、心を落ち着ける力があります。調べてみると、雨粒が土に触れることで跳ね上がる泡が、土壌中のバクテリアによって作り出される「ゲオスミン」という成分を空気中に放つのだそうです。この香りには、人の心拍数を穏やかにし、副交感神経を優位にする働きがあると知り、自然の力の奥深さに驚かされました。

草原の風、匂い、音、そして広がる緑──五感すべてで感じた大自然の豊かさは、疲れた心と体を静かに癒してくれました。あたりまえのように吸っていた空気や酸素が、どれほど大切なものであるかを改めて感じる夏休みとなりました。